トライアスロンで一番競技時間が長いパートがバイクパートです。
つまりトータルタイムのうち、一番タイムが短縮できる可能性の高いパートということです。
しかし、トライアスリートは3種目あるので、なかなかバイクだけに時間が割けないのが現状であると思います。
また、道具(バイク)を使うので、バイクの性能はもちろん、ポジションが自身にフィットしているかどうかもタイムに大きく影響します。

2016-04-04-00-30-20


更に、スイムやランはタイム管理でインターバルトレーニングやペース走を行うことが比較的一般的になっていますが、バイクの場合、屋外のトレーニングでタイムを管理するのは交通事情や気象条件などに左右されることもあり、難しいですよね。パワー(w)や心拍数(HR)などを指標にされている方も多いと思いますが、どれも絶対的なものではなく、ひとつの目安にしかなりません。つまり実際に自分が速く(強く)なっているのか?を客観的に把握することがなかなか難しいのです。

ではどういったトレーニングをすれば、効率よくバイクのレベルを向上させることができるのでしょうか?

バイクの速度は、ペダルを効率よく回すスキルの向上と、より高いトルクをかけられる筋力の向上、さらにそこに抵抗値(空気抵抗・転がり抵抗)という要素も加わります。つまり、バイクのスピードは以下の公式であらわすことができます。

スピード=トルク×回転数-抵抗
 ※空気抵抗に比べ転がり抵抗はごくわずかなので、ここでの抵抗とは空気抵抗のみと考えてください。

セントレア②

シンプルに考えてみてください。
つまり重いギアを速い回転で、より抵抗を少なくすることが求められます。
はい、言うのは簡単ですが、これがなかなか難しいんですよね。

トルク(筋力)を向上させるためには、重いギアを踏める(というより回せる)ように筋力トレーニングを行う必要があります。筋力を向上させるウェイトトレーニングももちろん効果的ですが、そこまでの時間がないという方は、低回転(50~60rpm)で重いギアを回す練習をすることがお勧めです。これは室内(ローラー台)でも十分可能です。
2015-03-21-14-26-55

ただ、注意しなくてはいけないのは、固定式のローラー台は慣性力が使えないという点です。慣性力とは動き始めた物体が動き続けようとする力のことです。実走では、ペダルを踏むのを止めてもしばらくペダルは回り続けようとします(※セラミックベアリングがよいのはこの慣性力を高めてくれるためです)。実は長距離を速く走るための秘訣はこの慣性力にあります。実走では、慣性力を生かして、常にペダルに力をかけ続けるのではなく、ペダリングのある局面においては、力を抜くことで脚を休ませ、加速と巡行を繰り返えすことで、より楽に走り続けることができるのです。

加速→巡行を繰り返すペダリングを「抜きのペダリング」といいます。力で踏み続けるペダリングは短い距離ならばよいですが、距離が長くなると、すぐに筋肉が疲弊してしまいます。抜きのペダリングを可能にするのが「抜感」=「力を抜く感覚」です。固定ローラーばかり行っているとその感覚が身に付きません。やはり実走トレーニングは必要不可欠といえます。乗れる環境にある人は、ローラーよりも外で乗るべきです。かといって固定ローラーがダメな訳ではなく、道具は目的に合わせて使い分けることが大切だよ、ということです。

2016130③


トライアスリートに多い前乗りポジションは、ペダルに体重をかけやすくして、力を楽に発揮できるようになる半面、回転力を落としてしまいがちです。回転力とはつまり「力を抜く感覚」=「抜感」に他なりません。多くのトライアスリート(特に男性)はパワーに頼りすぎています。逆に女性の場合は筋力不足からパワーが足りていない場合が多いです。どちらもバランスよく高めていることが強くなるためには重要です。

とはいうものの、筋力を高めるには限界があります。年齢的なものであったり、体質・体格的なものであったり。またトライアスロンの場合、他に2種目との兼ね合いから筋肉をつけすぎてしまうことでのデメリットも存在します(簡単に言うと、体が重くなりスイムでは沈みやすく、ランでは走るのがきつくなります)。

image

やはり、バイクのパフォーマンスを向上させるためには、スキル(技術)を高めることが大切です。
ペダリング効率だけ見ても、トッププロでも7~8割だと言われています(2~3割はエネルギーをロスしている)。
恐らく一般的なトライアスリートであれば、ペダリング効率は3~4割程度だと思います(上手い人で5~6割)。
つまり無駄にエネルギーを消費し、頑張っている割に進んでいない、ということです。

スキルは目に見えません。先ほどの「抜感」に代表される「感覚」だからです。
しかし、目に見えていない部分に「差」を生み出す違いがあるのです。

次回(バイクが強くなりたいあなたへ...その②)は、どうしたら
スキル(技術)を高められるかに迫ります。