竹内鉄平がドラフティングについて真面目に考察し、みんなで考えていこう!というコラムです。
その③は、「ルールとモラル」です

まずはこちらをお読みください。

その①「ドラフティングの定義とルールの変遷」
http://asutama.blog.jp/archives/1039752709.html 
その②「ドラフティング禁止ルールを理解する」
http://asutama.blog.jp/archives/1039766461.html

ドラフティング禁止ルールのトライアスロンでは、限られた人数の審判がレース100%管理監督することは、不可能です。選手自身が、自分自身、また他競技者を律しながら、レースをする必要があります。つまり「ルール」よりも大事なのは、選手一人一人の「モラル」であるという事実をまずは理解しておかなくてはいけません。コースの状況によっても、厳密にルールを適用し、それを審判が取り締まることはほぼ不可能といってよいでしょう。

JTU競技規則でも、第2章の競技者規範において以下のように謳っています。

(基本精神)
第7条 競技者は次の各号に掲げる基本精神を尊重する。
(1) スポーツマン精神とフェアプレイの精神により競技を行うこと。
(2) 日ごろの鍛錬により競技力の向上と体力の増進を目指すこと。
(3) 競技者一人一人がこの規則を守り、違反を行ってしまったときは自ら申告する精神を培うこと。
(4) スポーツ活動を通じて社会人としての健全な精神の育成を目指すこと。
(5) 勝利を至上とすることなく、主義主張を越えて理解し合い、有効を結ぶこと。
(6) トライアスロン等に対する、スポーツとしての品格と社会認識を高めること。

これを読むと、「みんながドラフティングをしている、フェアじゃない!みんがやってるから自分もやるのだ!」と開き直ったり、大会運営や審判に文句を言ったりするのではなく、まずは自らが主体となってフェアプレイの精神を発揮する(ドラフティングを回避する行動を取る)ことが大事だということがわかるかと思います。

当然、ルール内であっても、ドラフティングと間違われるような行為(追い抜く意志がないのはもちろん、意志があったとしても、15秒以内に追い抜けずにゾーンから出る、というのを繰り返す等)は、慎むべきです。また、自分は追い抜きをかけず、7m(後輪からだと約5m)離れて前の選手をペースメーカーにしてるだけだから、ルール違反ではない、という認識を持ってる選手は多いと思います。速度域にもよりますが、7m離れていても、数%程度のドラフティング効果は得られます。現行のJTUの7mルールはドラフティング効果を防ぐという観点からすれば甘いのですが(世界標準は10~12mとなっています)、ここで注意したいのは、ドラフティング効果があるからうんぬんという問題ではなく、自分の目で見た7mは、端から見ると5~6mにしか見えないという事実です。これは主観と客観の違いでもありますが、自分では7mの間隔をとってギリギリのラインでついていると思っていても、審判から見て、7m以内と捉えられたら、それはアウト(ドラフティング違反)となります。ドラフティングについての抗議は認められていないためです。

また、高速走行しながら正確に7mという距離をきっちりと把握できる人は少ないはずです。実際に、7mギリギリでついていると、前の選手が少しでもペースを落としたら、追い越す意志がないにも関わらず、ドラフトゾーンに数秒間は入ってしまうことがあります。明確なルール違反ではありませんが、それにより、楽ができているということは本人が一番よくわかっているはずです。自分ではルールを守ってる、ドラフティングはしていない、ルール内でギリギリを攻めていると思っていても、周りから見たら、あいつはドラフティングをしてる、ドラフティング常習犯だ!というレッテルを貼られてしまうことにもなりかねません。自分ではルールを守って一生懸命に頑張っている(つもりな)のに、それは悲しいことだと思いませんか?

更には、トップ選手であれば、一般の選手からの模範となるべきです。トップ選手がそういったテクニックをうまく使ってる、ということが広まれば、じゃあ自分たちもそういったテクニックを使ってもいいんだ、ということになり、更に後ろの方ではドラフティング集団が多発することになるでしょう。自分(の結果)さえよければいい、他の選手のことは知らない、というのは余りにも視野が狭いと自分は思います。

今年の伊良湖大会ではロードバイクで移動マーシャルとして選手と一緒に走りました。自分も現役選手なので、外から見るとその選手の気持がよくわかります。仕方がなくドラフティング状態になり、そこから抜けようとしてる選手と、ちょっとでも楽をしようとしている選手。そして、自分が尊敬しているプロ選手は、誰が見てもドラフティングをしていないな、と思わせる距離をとってレースをしていました。10m以上離れていれば、まずドラフティングをとられることはありません。エイジ上位の選手でもそういったポリシーを感じる選手が増えてきているのは嬉しい限りです。勝負に必死なのはわかります。楽をしたいのもわかります。でも最終的には自分との戦いなんです。勝負に勝っても、それは負けだと思います。


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この提言は、自分自身への戒めとしても書いています。
事実、自分も過去にはここであげたようなグレーゾーンのテクニックを用いたことがありました。
今となって思えば、それは自分の弱さがもたらしたものであったと反省しています。

競泳のルール変遷を見ても分かる通り、スポーツにおいては、ルールの盲点をつくことは一つの戦略でもあります。すると、ルールはより細分化、厳密化していきます。それをトライアスロンというスポーツの成熟化、発展と考える人も中にはいるかもしれません。しかし、それにより必要となる審判数が多くなって人員確保ができなくなったり、キャパシティの理由からコースが設定できなくなったり、参加人数に制限が必要になったり、というように大会運営にマイナスな影響を与えることがあることは十分考えられます。

一人一人がルールを守るだけではなく、なぜそのルール(モラル)が存在するのか?またもしそのルール(モラル)が守られなくなったら、大会自体はどうなってしまうのか?その広い視野での影響を考えてみる、そういった意識を持つことで、トライアスロンは更によりより方向へと進んでくのではないかと今は考えています。

この件については様々な考え方、ご意見があるかと思います。この提言がトライアスロンのルールを考えるきっかけになり、トライアスロン自体のよりより発展につながれば嬉しいです。

トライアスロンチームあすたま代表
株式会社トライアーティスト代表取締役    竹内 鉄平